syobun 世界に処分される前に



◇ぼくらは世界に勝手に創られ、永らえた。
皮肉にもぼくらを創った者たちは、自ら生み出した業に溺れ沈んでいった。
科学の残骸と墓場で埋め尽くされたこの世界の隅っこで、ぼくらは勝手に生きていた。
鮮やかな赤い亀裂の入った空、もうすぐ永遠の夕暮れも終わるだろう。
せめて不完全でも、”完全”な姿で最期を迎えたい。
そう願う彼らをぼくは治療する。 世界に処分される前に。

◆季刊エス38号(スパークルエス)掲載